2018-01-01から1年間の記事一覧
私が三国志に熱中した最初のきっかけは、中学生の頃、友人宅で遊んだ『真・三國無双2』でした。 疾走感のある音楽、一騎当千と無双の爽快感、三国戦乱のスペクタクルと多くの魅力的な登場人物たち。まったくの異文化にして全てが胸を熱くする、斬新で大きな…
徐晃と関羽は、持てる武の限りを尽くして戦った。 激しく合わさる刃が武の髄を現し、戦いを通して互いの生き様を語り合う。 良き宿敵(とも)を得たり___。 鋼を熱く打ち合い死闘を演じながら、二人の表情には笑みすら浮かんだ。 しかし、それゆえに両雄は、命…
徐晃は、乱世に生まれた。 良き親に育てられ友にも恵まれた。 しかし戦乱を深める時代の潮流は自然、彼を武人として成長させた。 過酷な戦場を幾多も経験し、暗迷と葛藤の日々も乗り越えて、徐晃は真に仕えるべき主・曹操と出会う。 乱世統一の大望を支え、…
徐晃と満寵は騎首を並べて、樊城を出撃した。 孫呉の猛攻に苦しむ曹仁が江陵で救援を待っている。 しかし、江陵の北道を封鎖し曹・孫の合戦を睨んでいた関羽は樊城の動きを見逃さず、一軍を率いて進撃を開始した。 「・・・計画通り。 まずは陽動に乗ってくれた…
赤壁に大火が昇る。 夜空は赤く燃え盛り、曹操軍の大船団は紅蓮の炎に沈んだ。 徐晃は、河北出身の騎馬隊をよく率いた事から本大戦では水軍に加わらず、荊州の要衝・樊城(はんじょう)の防衛を担っていた。 赤壁決戦での曹操軍の大敗、そして辛くも生還した曹…
曹操軍は荊州を征服し、南進を続けた。 この地に居た劉備は再び依る辺(べ)を失い、更には曹操軍の追撃を受けてひたすら逃げる他なかった。 新たに軍師・諸葛亮の力を得たものの、仁の人・劉備は己を慕って付いてくる民を見捨てる事が出来ず、南へ逃げる足は…
乱世を統べる曹操のもとで、徐晃はその武を奮い続けた。 北へ。 袁家残党を掃討すべく、曹操軍は中原を超えて砂漠の国々へ乗り込む。 徐晃は良く兵を率いて、時に計略を用いて敵を降し、時に苛烈な武を奮って敵を討ち、次々と武功を上げた。 数万の大軍を擁…
袁紹が死んだ。 袁家は、官渡の敗戦から再起しその存亡を賭けて団結すべきところを、あろうことか袁譚(えんたん)と袁尚(えんしょう)の兄弟が後継を巡って骨肉の争いを始め、曹操軍の侵攻を許した。 曹操は自ら馬を駆り、袁家の拠点・邯鄲(かんたん)を破り、…
満寵はある日、徐晃の邸宅に招かれた。 「よくぞ参られた満寵殿。 今宵は、日頃の感謝を込めて晩餐を作らせて頂き申す」 「徐晃殿が作るのかい?」 思わぬ申し出に満寵は呆気にとられたが、やがて好奇の眼差しで厨房に立つ徐晃の後ろ姿を眺めた。 居間の卓に…
官渡決戦は、長期戦の様相を呈していた。 白馬・延津の初戦で手痛い損害を被った袁紹は慎重に転じ、数で優るその威を以って持久戦に持ち込んだ。 その圧倒的物量に、曹操軍は徐々に劣勢へと追いやられる。 状況を打開すべく軍議を練る諸将を前に、徐晃が言っ…
関羽との訣別を経て徐晃は、より一層の鍛錬に励んだ。 「拙者の武、兄者の志と共にある」 関羽の雄々しき言が頭の中に響く。 あの比類なき強さの源泉は、仁の志を支えんと決す強固な信念にある。 徐晃が往く武の頂き、その眼前に立ち塞がる巨大な壁の如き関…
続く延津の戦いでは、袁紹軍の猛将・文醜の騎馬隊が猛威を奮った。 これに力押しで当たらず、専守防衛に徹した徐晃の指揮こそ兵法の妙であろう。 文醜隊に疲れが見え、勢いが死んだ機に一転、徐晃隊は攻勢に出た。 さらに軍師・荀攸の策で文醜の兵に乱れが生…
徐晃は良く兵を率いて戦った。 袁紹軍の動きを見極め、右翼に敵の勢いあればこれを受け流し、左翼に敵が浮き足立てばこれを苛烈に攻め立てた。 兵を手足の如く動かす徐晃の采配は見事であった。 敵将・顔良も奮戦するが、この白馬の戦場に引きずり出された時…
乱世の統一を急ぐ曹操は、時として彼に反する者や愚鈍な者に対して苛烈だった。 全ては、混迷の乱世を終わらせるため。 だが仁の人・劉備にとって曹操の非情な在り方は受け入れられなかった。 共に乱世の終焉という大志を同じくしながら、二人の英雄は決別す…
歴史ある漢王朝の帝を戴いた曹操は勢力を拡大し、各地の群雄は続々と軍門に降った。 仁の人、劉備もその一人である。 今だ流浪の身でわずかな勢力しか持たぬ劉備だが、人望があり慕われた。 漢の献帝の縁戚という血筋もある。 曹操は彼を厚く遇した。 劉備も…
徐晃は曹操軍の先陣に立って奮戦した。 先の張繍との戦乱、そして寿春の名族・袁術との戦いでも、獅子奮迅の活躍を見せる。 「参る!」 将として兵を率いながら、自らも巨大な斧を奮って次々と敵を薙ぎ倒す。 常人には持ち上げる事すら困難な重量だが、徐晃…
歴史ある漢王朝の帝を戴いた曹操は、大義を得る。 付近の群雄たちは続々と曹操のもとに降り、勢力は一気に栄えた。 先だって降伏した張繍(ちょうしゅう)も彼ら群雄のうちの一人である。 「我が宛城にて、曹操殿を歓待致したく、お招きさせて頂きます。」 曹…
徐晃は、許昌で妻を娶(めと)った。 これには徐晃が朴念仁で、なかなか縁談が進まなかったが、仲人の曹洪は随分と手を焼いてくれた。 徐晃の朴念仁ぶりを表す挿話として、少年時代にこんな事があった。 徐晃と満寵がとても仲が良い様を見ていた晃の妹は、純真…
曹操軍の陣営には、綺羅星の如き数多の名将がいた。 中でも最古参の猛将・夏候惇は、特筆すべき存在感で曹操軍を率いた。 徐晃もこの夏候惇によく用兵と戦術の法を学んだ。 ある日、夏候惇が言った。 「徐晃よ、許昌の鍛冶屋には腕利きが揃っている。 お前の…
徐晃は迷いを断ち、武人として覚醒した。 武の頂きへ駆け昇るべく己が信ずる道を邁進せん。 戦場を駆ける徐晃の眼には、長き雌伏の時を経て晴れ晴れと道が開き、新たなる景色が見えた。 「おお・・・武の頂きが見える!」 目覚ましい徐晃の奮戦、そして夏候惇、…
夜半、徐晃の軍営に突如一人の男が訪れた。 「やあ、久しぶりだね。徐晃殿」 大胆にも単身、丸腰で敵陣に乗り込んできたその顔、徐晃には見覚えがあった。 「・・・満寵殿?あの満寵殿か? おお、なんと懐かしい!」 今は敵味方といえ旧知の仲、徐晃は礼を尽く…
事態は風雲急を告げる。 李傕と郭汜が起こした内紛に乗じて、董承ら謀臣は献帝を伴い洛陽へ逃れた。 楊奉はかねての計画通り、李傕を裏切って董承に付いた。 徐晃は、その楊奉の下にあって献帝を護衛し洛陽にいる。 ところが帝を奪われた事の重大さに気付い…
西涼の豪族・馬騰は、長安奪取を目論み兵を挙げた。 「漢室の威光を盾に暴政を奮う不義の輩、李傕を討つ! 我が正義の刃、受けてみよッ」 長安近郊の平野で、馬騰軍と李傕軍は激突した。 徐晃はこの時、李傕軍・楊奉麾下の一隊を率いて参陣し、ここで正規軍…
楊奉の配下となった徐晃は、各地で賊徒鎮圧にあたり、ここで実戦と用兵の法を学んだ。 白波(はくは)賊上がりの兵の中にあっても、徐晃はその高潔で清廉な在り方を決して崩さなかった。 賊から巻き上げた財で酒色に溺れる彼らを、しかし一方でその精強な武勇…
精悍な若者に成長した徐晃は、はじめ父と同じ県の役人として禄を食んだ。 真面目に、実直に職務を果たす傍ら、兵書を学び鍛錬に励んだ。 その頃、世を覆った黄巾賊も主な首領は官軍に討たれ、乱は一応の終息を見る。 だが依然各地には賊の残党が跋扈(ばっこ)…
※この物語はフィクションです。 姓は徐、名は晃。字(あざな)は公明。 司隷河東郡楊県の人。 父は真面目で廉直な地方役人、母はおおらかで優しく、妹もいた。 晃はこの家庭に生まれ幼少期を育った。 晃は近所の悪童どもを率いて、喧嘩して街中を駆け回った。 …