2018-01-01から1年間の記事一覧

メイキングオブ徐晃伝

私が三国志に熱中した最初のきっかけは、中学生の頃、友人宅で遊んだ『真・三國無双2』でした。 疾走感のある音楽、一騎当千と無双の爽快感、三国戦乱のスペクタクルと多くの魅力的な登場人物たち。まったくの異文化にして全てが胸を熱くする、斬新で大きな…

徐晃伝 二十五『激闘の行方』

徐晃と関羽は、持てる武の限りを尽くして戦った。 激しく合わさる刃が武の髄を現し、戦いを通して互いの生き様を語り合う。 良き宿敵(とも)を得たり___。 鋼を熱く打ち合い死闘を演じながら、二人の表情には笑みすら浮かんだ。 しかし、それゆえに両雄は、命…

徐晃伝 二十四『武人の生き様』

徐晃は、乱世に生まれた。 良き親に育てられ友にも恵まれた。 しかし戦乱を深める時代の潮流は自然、彼を武人として成長させた。 過酷な戦場を幾多も経験し、暗迷と葛藤の日々も乗り越えて、徐晃は真に仕えるべき主・曹操と出会う。 乱世統一の大望を支え、…

徐晃伝 二十三『軍神・関羽』

徐晃と満寵は騎首を並べて、樊城を出撃した。 孫呉の猛攻に苦しむ曹仁が江陵で救援を待っている。 しかし、江陵の北道を封鎖し曹・孫の合戦を睨んでいた関羽は樊城の動きを見逃さず、一軍を率いて進撃を開始した。 「・・・計画通り。 まずは陽動に乗ってくれた…

徐晃伝 二十二『赤壁の雪辱』

赤壁に大火が昇る。 夜空は赤く燃え盛り、曹操軍の大船団は紅蓮の炎に沈んだ。 徐晃は、河北出身の騎馬隊をよく率いた事から本大戦では水軍に加わらず、荊州の要衝・樊城(はんじょう)の防衛を担っていた。 赤壁決戦での曹操軍の大敗、そして辛くも生還した曹…

徐晃伝 二十一『覇道と王道』

曹操軍は荊州を征服し、南進を続けた。 この地に居た劉備は再び依る辺(べ)を失い、更には曹操軍の追撃を受けてひたすら逃げる他なかった。 新たに軍師・諸葛亮の力を得たものの、仁の人・劉備は己を慕って付いてくる民を見捨てる事が出来ず、南へ逃げる足は…

徐晃伝 二十『南へ』

乱世を統べる曹操のもとで、徐晃はその武を奮い続けた。 北へ。 袁家残党を掃討すべく、曹操軍は中原を超えて砂漠の国々へ乗り込む。 徐晃は良く兵を率いて、時に計略を用いて敵を降し、時に苛烈な武を奮って敵を討ち、次々と武功を上げた。 数万の大軍を擁…

徐晃伝 十九『戦わずして勝つ』

袁紹が死んだ。 袁家は、官渡の敗戦から再起しその存亡を賭けて団結すべきところを、あろうことか袁譚(えんたん)と袁尚(えんしょう)の兄弟が後継を巡って骨肉の争いを始め、曹操軍の侵攻を許した。 曹操は自ら馬を駆り、袁家の拠点・邯鄲(かんたん)を破り、…

徐晃伝 十八『JOCO'Sキッチン』

満寵はある日、徐晃の邸宅に招かれた。 「よくぞ参られた満寵殿。 今宵は、日頃の感謝を込めて晩餐を作らせて頂き申す」 「徐晃殿が作るのかい?」 思わぬ申し出に満寵は呆気にとられたが、やがて好奇の眼差しで厨房に立つ徐晃の後ろ姿を眺めた。 居間の卓に…

徐晃伝 十七『官渡決戦』

官渡決戦は、長期戦の様相を呈していた。 白馬・延津の初戦で手痛い損害を被った袁紹は慎重に転じ、数で優るその威を以って持久戦に持ち込んだ。 その圧倒的物量に、曹操軍は徐々に劣勢へと追いやられる。 状況を打開すべく軍議を練る諸将を前に、徐晃が言っ…

徐晃伝 十六『修練の日々』

関羽との訣別を経て徐晃は、より一層の鍛錬に励んだ。 「拙者の武、兄者の志と共にある」 関羽の雄々しき言が頭の中に響く。 あの比類なき強さの源泉は、仁の志を支えんと決す強固な信念にある。 徐晃が往く武の頂き、その眼前に立ち塞がる巨大な壁の如き関…

徐晃伝 十五『宿命』

続く延津の戦いでは、袁紹軍の猛将・文醜の騎馬隊が猛威を奮った。 これに力押しで当たらず、専守防衛に徹した徐晃の指揮こそ兵法の妙であろう。 文醜隊に疲れが見え、勢いが死んだ機に一転、徐晃隊は攻勢に出た。 さらに軍師・荀攸の策で文醜の兵に乱れが生…

徐晃伝 十四『白馬強襲』

徐晃は良く兵を率いて戦った。 袁紹軍の動きを見極め、右翼に敵の勢いあればこれを受け流し、左翼に敵が浮き足立てばこれを苛烈に攻め立てた。 兵を手足の如く動かす徐晃の采配は見事であった。 敵将・顔良も奮戦するが、この白馬の戦場に引きずり出された時…

徐晃伝 十三『将』

乱世の統一を急ぐ曹操は、時として彼に反する者や愚鈍な者に対して苛烈だった。 全ては、混迷の乱世を終わらせるため。 だが仁の人・劉備にとって曹操の非情な在り方は受け入れられなかった。 共に乱世の終焉という大志を同じくしながら、二人の英雄は決別す…

徐晃伝 十二『戦友』

歴史ある漢王朝の帝を戴いた曹操は勢力を拡大し、各地の群雄は続々と軍門に降った。 仁の人、劉備もその一人である。 今だ流浪の身でわずかな勢力しか持たぬ劉備だが、人望があり慕われた。 漢の献帝の縁戚という血筋もある。 曹操は彼を厚く遇した。 劉備も…

徐晃伝 十一『武人張遼』

徐晃は曹操軍の先陣に立って奮戦した。 先の張繍との戦乱、そして寿春の名族・袁術との戦いでも、獅子奮迅の活躍を見せる。 「参る!」 将として兵を率いながら、自らも巨大な斧を奮って次々と敵を薙ぎ倒す。 常人には持ち上げる事すら困難な重量だが、徐晃…

徐晃伝 十『乱世の奸雄』

歴史ある漢王朝の帝を戴いた曹操は、大義を得る。 付近の群雄たちは続々と曹操のもとに降り、勢力は一気に栄えた。 先だって降伏した張繍(ちょうしゅう)も彼ら群雄のうちの一人である。 「我が宛城にて、曹操殿を歓待致したく、お招きさせて頂きます。」 曹…

徐晃伝 九『徐蓋』

徐晃は、許昌で妻を娶(めと)った。 これには徐晃が朴念仁で、なかなか縁談が進まなかったが、仲人の曹洪は随分と手を焼いてくれた。 徐晃の朴念仁ぶりを表す挿話として、少年時代にこんな事があった。 徐晃と満寵がとても仲が良い様を見ていた晃の妹は、純真…

徐晃伝 八『牙断』

曹操軍の陣営には、綺羅星の如き数多の名将がいた。 中でも最古参の猛将・夏候惇は、特筆すべき存在感で曹操軍を率いた。 徐晃もこの夏候惇によく用兵と戦術の法を学んだ。 ある日、夏候惇が言った。 「徐晃よ、許昌の鍛冶屋には腕利きが揃っている。 お前の…

徐晃伝 七『新たなる道』

徐晃は迷いを断ち、武人として覚醒した。 武の頂きへ駆け昇るべく己が信ずる道を邁進せん。 戦場を駆ける徐晃の眼には、長き雌伏の時を経て晴れ晴れと道が開き、新たなる景色が見えた。 「おお・・・武の頂きが見える!」 目覚ましい徐晃の奮戦、そして夏候惇、…

徐晃伝 六『決意』

夜半、徐晃の軍営に突如一人の男が訪れた。 「やあ、久しぶりだね。徐晃殿」 大胆にも単身、丸腰で敵陣に乗り込んできたその顔、徐晃には見覚えがあった。 「・・・満寵殿?あの満寵殿か? おお、なんと懐かしい!」 今は敵味方といえ旧知の仲、徐晃は礼を尽く…

徐晃伝 五『曹操』

事態は風雲急を告げる。 李傕と郭汜が起こした内紛に乗じて、董承ら謀臣は献帝を伴い洛陽へ逃れた。 楊奉はかねての計画通り、李傕を裏切って董承に付いた。 徐晃は、その楊奉の下にあって献帝を護衛し洛陽にいる。 ところが帝を奪われた事の重大さに気付い…

徐晃伝 四『無明』

西涼の豪族・馬騰は、長安奪取を目論み兵を挙げた。 「漢室の威光を盾に暴政を奮う不義の輩、李傕を討つ! 我が正義の刃、受けてみよッ」 長安近郊の平野で、馬騰軍と李傕軍は激突した。 徐晃はこの時、李傕軍・楊奉麾下の一隊を率いて参陣し、ここで正規軍…

徐晃伝 三『葛藤』

楊奉の配下となった徐晃は、各地で賊徒鎮圧にあたり、ここで実戦と用兵の法を学んだ。 白波(はくは)賊上がりの兵の中にあっても、徐晃はその高潔で清廉な在り方を決して崩さなかった。 賊から巻き上げた財で酒色に溺れる彼らを、しかし一方でその精強な武勇…

徐晃伝 二『恩人』

精悍な若者に成長した徐晃は、はじめ父と同じ県の役人として禄を食んだ。 真面目に、実直に職務を果たす傍ら、兵書を学び鍛錬に励んだ。 その頃、世を覆った黄巾賊も主な首領は官軍に討たれ、乱は一応の終息を見る。 だが依然各地には賊の残党が跋扈(ばっこ)…

徐晃伝 一『友』

※この物語はフィクションです。 姓は徐、名は晃。字(あざな)は公明。 司隷河東郡楊県の人。 父は真面目で廉直な地方役人、母はおおらかで優しく、妹もいた。 晃はこの家庭に生まれ幼少期を育った。 晃は近所の悪童どもを率いて、喧嘩して街中を駆け回った。 …