2018-07-01から1ヶ月間の記事一覧

メイキングオブ徐晃伝

私が三国志に熱中した最初のきっかけは、中学生の頃、友人宅で遊んだ『真・三國無双2』でした。 疾走感のある音楽、一騎当千と無双の爽快感、三国戦乱のスペクタクルと多くの魅力的な登場人物たち。まったくの異文化にして全てが胸を熱くする、斬新で大きな…

徐晃伝 二十五『激闘の行方』

徐晃と関羽は、持てる武の限りを尽くして戦った。 激しく合わさる刃が武の髄を現し、戦いを通して互いの生き様を語り合う。 良き宿敵(とも)を得たり___。 鋼を熱く打ち合い死闘を演じながら、二人の表情には笑みすら浮かんだ。 しかし、それゆえに両雄は、命…

徐晃伝 二十四『武人の生き様』

徐晃は、乱世に生まれた。 良き親に育てられ友にも恵まれた。 しかし戦乱を深める時代の潮流は自然、彼を武人として成長させた。 過酷な戦場を幾多も経験し、暗迷と葛藤の日々も乗り越えて、徐晃は真に仕えるべき主・曹操と出会う。 乱世統一の大望を支え、…

徐晃伝 二十三『軍神・関羽』

徐晃と満寵は騎首を並べて、樊城を出撃した。 孫呉の猛攻に苦しむ曹仁が江陵で救援を待っている。 しかし、江陵の北道を封鎖し曹・孫の合戦を睨んでいた関羽は樊城の動きを見逃さず、一軍を率いて進撃を開始した。 「・・・計画通り。 まずは陽動に乗ってくれた…

徐晃伝 二十二『赤壁の雪辱』

赤壁に大火が昇る。 夜空は赤く燃え盛り、曹操軍の大船団は紅蓮の炎に沈んだ。 徐晃は、河北出身の騎馬隊をよく率いた事から本大戦では水軍に加わらず、荊州の要衝・樊城(はんじょう)の防衛を担っていた。 赤壁決戦での曹操軍の大敗、そして辛くも生還した曹…

徐晃伝 二十一『覇道と王道』

曹操軍は荊州を征服し、南進を続けた。 この地に居た劉備は再び依る辺(べ)を失い、更には曹操軍の追撃を受けてひたすら逃げる他なかった。 新たに軍師・諸葛亮の力を得たものの、仁の人・劉備は己を慕って付いてくる民を見捨てる事が出来ず、南へ逃げる足は…

徐晃伝 二十『南へ』

乱世を統べる曹操のもとで、徐晃はその武を奮い続けた。 北へ。 袁家残党を掃討すべく、曹操軍は中原を超えて砂漠の国々へ乗り込む。 徐晃は良く兵を率いて、時に計略を用いて敵を降し、時に苛烈な武を奮って敵を討ち、次々と武功を上げた。 数万の大軍を擁…

徐晃伝 十九『戦わずして勝つ』

袁紹が死んだ。 袁家は、官渡の敗戦から再起しその存亡を賭けて団結すべきところを、あろうことか袁譚(えんたん)と袁尚(えんしょう)の兄弟が後継を巡って骨肉の争いを始め、曹操軍の侵攻を許した。 曹操は自ら馬を駆り、袁家の拠点・邯鄲(かんたん)を破り、…

徐晃伝 十八『JOCO'Sキッチン』

満寵はある日、徐晃の邸宅に招かれた。 「よくぞ参られた満寵殿。 今宵は、日頃の感謝を込めて晩餐を作らせて頂き申す」 「徐晃殿が作るのかい?」 思わぬ申し出に満寵は呆気にとられたが、やがて好奇の眼差しで厨房に立つ徐晃の後ろ姿を眺めた。 居間の卓に…

徐晃伝 十七『官渡決戦』

官渡決戦は、長期戦の様相を呈していた。 白馬・延津の初戦で手痛い損害を被った袁紹は慎重に転じ、数で優るその威を以って持久戦に持ち込んだ。 その圧倒的物量に、曹操軍は徐々に劣勢へと追いやられる。 状況を打開すべく軍議を練る諸将を前に、徐晃が言っ…

徐晃伝 十六『修練の日々』

関羽との訣別を経て徐晃は、より一層の鍛錬に励んだ。 「拙者の武、兄者の志と共にある」 関羽の雄々しき言が頭の中に響く。 あの比類なき強さの源泉は、仁の志を支えんと決す強固な信念にある。 徐晃が往く武の頂き、その眼前に立ち塞がる巨大な壁の如き関…

徐晃伝 十五『宿命』

続く延津の戦いでは、袁紹軍の猛将・文醜の騎馬隊が猛威を奮った。 これに力押しで当たらず、専守防衛に徹した徐晃の指揮こそ兵法の妙であろう。 文醜隊に疲れが見え、勢いが死んだ機に一転、徐晃隊は攻勢に出た。 さらに軍師・荀攸の策で文醜の兵に乱れが生…

徐晃伝 十四『白馬強襲』

徐晃は良く兵を率いて戦った。 袁紹軍の動きを見極め、右翼に敵の勢いあればこれを受け流し、左翼に敵が浮き足立てばこれを苛烈に攻め立てた。 兵を手足の如く動かす徐晃の采配は見事であった。 敵将・顔良も奮戦するが、この白馬の戦場に引きずり出された時…

徐晃伝 十三『将』

乱世の統一を急ぐ曹操は、時として彼に反する者や愚鈍な者に対して苛烈だった。 全ては、混迷の乱世を終わらせるため。 だが仁の人・劉備にとって曹操の非情な在り方は受け入れられなかった。 共に乱世の終焉という大志を同じくしながら、二人の英雄は決別す…

徐晃伝 十二『戦友』

歴史ある漢王朝の帝を戴いた曹操は勢力を拡大し、各地の群雄は続々と軍門に降った。 仁の人、劉備もその一人である。 今だ流浪の身でわずかな勢力しか持たぬ劉備だが、人望があり慕われた。 漢の献帝の縁戚という血筋もある。 曹操は彼を厚く遇した。 劉備も…