2018-08-01から1ヶ月間の記事一覧

徐晃伝 二十八『父の背中』

長きに渡る南方の戦乱を終えて許昌に帰った徐晃は、しばし休息の時を過ごす。 久方ぶりに家族との時間を味わい、しかしそれも束の間、すぐにまたひたすら修行と練兵に打ち込む日々に戻った。 徐蓋(じょがい)。 歳の十を過ぎたこの少年は、いつも邸宅の庭先で…

徐晃伝 二十七『遼来来』

「推して参る!」 セリャーーッ!と斬り掛かる張遼の激しい連撃を、徐晃は槍さばき巧みに体幹をぶらさず、一刀一刀確実に受け流す。 ギラリ、一瞬を見極めて渾身の一振りを繰り出す徐晃。 その一撃をすんでの所で、張遼は飛び退き躱(かわ)してみせた。 周り…

徐晃伝 二十六『午睡の夢』

「・・・孟徳、・・・孟徳!」 夏候惇は怪訝な表情で曹操の顔を覗き込んだ。 曹操は、練兵中に寝ていた。 「ん・・・むぅ・・・夢を見ていたわ」 練兵場に面する台座に居眠りをしていた曹操は、物言いたげな夏候惇の顔を見るや、あくびをしながら言った。 「今は雌伏の時…

三好三大天 第一話『桃園の誓い』

時は戦国。 四国は、阿波徳島に三人の男がいた。 長逸(ながやす)、政勝(まさかつ)、友通(ともみち)。 春風が吹き抜けて一面に、桃の花が咲き乱れる。 長逸は盃を掲げ二人に語りかけた。 「我ら、義にて結ばれし三兄弟。 上は大殿を支え奉り、下は民草に至る…