2018-10-01から1ヶ月間の記事一覧
「では、若様。 書面に押を頂きたく」 仁徳の士・長逸(ながやす)は、丁重に礼を以って座を下がり、一人の少年に筆を差し出した。 仙熊丸。 齢十一のこの少年は、幼年に似つかわず落ち着いた表情で堂々と居直る。 静かに筆を執ると、すらすらと書面に花押を…
泥沼の混戦が続いていた。 室町管領・細川晴元と、石山本願寺・証如光敎。 初めは結託して戦乱を煽動した両者であるが、やがて折り合いが悪くなり敵対した。 畿内の権益独占のために彼らが利用した一向一揆は民の怨嗟を呑んで肥大化し、もはや制御不能の暴走…
世は乱れていた。 長きに渡って続いた室町の世。 権力に寄生する佞臣(ねいしん)が跋扈(ばっこ)し、汚濁にまみれた内部抗争に明け暮れる世俗は荒れ果て、すっかり腐敗しきっていた。 民は困窮と飢饉に苦しみ、各地で一揆が沸き起こる。 略奪と殺戮の戦乱は国…
司馬懿。 傑出した智謀を秘める稀代の軍略家だが、今はまだ鳴りを潜めて淡々と政務をこなすのみ。 それが突如、魏公・曹操へ奏上を述べた。 「漢中を得た今こそ好機。 このまま巴蜀の劉備を討つべきでありましょう」 天険の益州深くまで攻め入るには困難を伴…
ノンアルコールビール。 今まで全く飲む機会はありませんでした。 自分とは無関係の事と思っておりました。 飲みたければ普通に、ビール飲むからね。 しかし私事ですがこのたび病院で常飲薬を処方され、毎晩寝る前に飲まなければならぬ薬が出来て、状況は一…
稀代の名将・夏侯淵。 彼の指揮の下、徐晃、張郃らの活躍で涼州の戦乱は平定されてゆく。 西方に残る敵対勢力は、漢中に依る五斗米道の祖・張魯を残すのみ。 今や西涼の死神とも称されるしぶとさで抵抗を続ける馬超も、張魯の幕下で魏軍に抗していた。 そん…
魏軍は、草原を駆ける。 先頃魏公の位に昇り、国を拓いた曹操の武威の下で魏軍は、今だ治まらぬ涼州の諸部族相手に草原を駆けていた。 「駆けよ、ひた駆けよ! あの高台を目指すのだ!」 徐晃は将として一軍の指揮を執る。 背後から勢い盛んに迫る騎馬兵は…
賈詡。 謀略を得意とする智将で、降将であるが、今や曹操軍の参謀格として不動の地位を築いていた。 徐晃とも縁がある。 かつて楊奉に仕えていた徐晃は、楊奉の主・李傕の軍に属していたがその李傕の軍師として、賈詡が智謀を奮った時期があった。 かつて敵…
「一族の仇!曹操、覚悟ーーっ!」 西涼の錦馬超。 その鬼気迫る魂魄は苛烈。 精鋭騎馬隊を率いて一気呵成に、曹操軍本隊の喉元へ攻めかかった。 曹操軍は渡河の最中である。 蒲阪津の先に橋頭保を築いた徐晃隊に呼応し、曹操軍の本隊もまた潼関の後背から攻…