徐晃伝 九『徐蓋』
これには徐晃が朴念仁で、なかなか縁談が進まなかったが、仲人の曹洪は随分と手を焼いてくれた。
徐晃の朴念仁ぶりを表す挿話として、少年時代にこんな事があった。
徐晃と満寵がとても仲が良い様を見ていた晃の妹は、純真な想いで兄にこう聞いた。
「あの素敵な殿方、満寵様は、どんな女性が好みなのかしら?」
「いや満寵殿の頭の中は、罠や仕掛けの事ばかり。
女性に興味など無いのではなかろうか」
無神経な徐晃の一言が妹を傷つけた。
しかし徐晃には妹がなぜ泣いているのか、わからなかった。
以来、ずっとそんな調子である。
徐晃の方こそ女心はどこ吹く風、己の研鑽と武の頂きにしか興味がなかったであろう。
それでも清廉な人柄と実直さに、好感を抱くのは頷ける。
相手は良家の娘であったが、そんな徐晃をよく理解し、内助の功を以ってその廉直なる武の求道を支えていった。
徐晃も誠実に妻を重んじ、仲睦まじい家庭を築いた。
やがて二人には男児が生まれる。
後に名を、徐蓋という。
徐晃伝 九 終わり