徐晃伝 十二『戦友』
歴史ある漢王朝の帝を戴いた曹操は勢力を拡大し、各地の群雄は続々と軍門に降った。
仁の人、劉備もその一人である。
今だ流浪の身でわずかな勢力しか持たぬ劉備だが、人望があり慕われた。
漢の献帝の縁戚という血筋もある。
曹操は彼を厚く遇した。
劉備もこの恩に報いるべく、先の袁術、呂布との戦いでは曹操軍配下として戦った。
徐晃はこの時、その生涯で最大の敵となる宿命の武人と出会う。
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姓は関、名は羽。字は雲長。
劉備の義弟で、武勇に優れ、清廉で義を重んじる高潔な人柄は天下に誉れ高い。
稀代の人傑であった。
互いに武を競い、彼らは交誼を結んだ。
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徐晃は問う。
貴公らにとって武の頂きとは、何処(いずこ)にござるか」
張遼が答える。
「私が目指す真の武は、より強大な敵、より困難な状況を追い求める。
それを討ち破った先にこそ頂きがあろう」
徐晃は頷く。
「張遼殿の武への求道、見事!
その苛烈な攻めの戦、拙者にとって学ぶことが多くござる」
「しからば徐晃殿にとって武の頂きとは、如何(いかん)?」
徐晃は静かに、熱く語る。
「・・・拙者が考えるに、己が武の研鑽に果ては無かれど、より強大な敵を討ち破るには己一人の武だけでは足り申さぬ。
共に戦う仲間の力、策や計略、あらゆる兵法を駆使して戦う極みにこそ、武の頂きが見える気がいたす」
張遼は頷く。
「うむ、徐晃殿の言う通り。
己の研鑽に励むと共に、将として広き眼を以って武を奮う・・・
これを肝に銘じねばな」
関羽も賛同した。
「お二方の言う事ご尤(もっと)も。
将たる者、敵を斬るだけが武ではござらぬ。
友軍と連携し、策や計略を用いる事もまた肝要なり」
張遼は問う。
「して、関羽殿にとって武の頂きとは?」
関羽は目を瞑り、悠然と構えて語った。
「武を磨き極める道こそ武人の本懐・・・
されど拙者は、己が武を何の為に奮うか。
その志にこそ武の頂きを見出すもの」
青龍の如き精悍な相貌には、並みならぬ決意が宿る。
「拙者の武は、義兄・劉玄徳の大志と共にあり」
「兄者が築く仁の世のため。
この関雲長、武を磨き奮い戦うのみ」
清々しき生き様に、徐晃は親しみを込めて言った。
・・・仕える主は違えども、我ら武人として往く道は同じ!」
三人はこうして互いの武を語り、認め合い、高め合った。
良き戦友(とも)であった。
徐晃伝 十二 終わり