徐晃伝 二十九『名将・夏侯淵』


 

 


「おっ、来たな徐晃~~!

今回は一つ、どうか俺に力を貸してくれや」

 

明るく陽気な振る舞いで徐晃の肩を叩く偉丈夫は、夏侯淵

 

 

曹操の旗上げから従う最古参の宿将として歴戦を闘い抜き、将帥としての器量が成熟しつつあった。

 

夏侯淵殿、麾下の副将をお任せ頂き光栄にござる。

何卒よろしくお頼み申す!」

 

赤壁の敗戦から向こう、曹操の支配基盤が比較的堅固でない西域方面では地方豪族の反乱が相次いだ。

 

今回、并州晋陽・太原の地で叛(そむ)いた勢力征討の任に当たり、総大将・夏侯淵はその副将として徐晃を招いた。

 

「だはぁ〜〜!相変わらず固いな徐晃

ま、そう気負いなさんな。

 

だが!戦には敗けられねえ。

気張れよ〜〜!」

 

 

「はっ!!」

 

徐晃は恭しく拱手(きょうしゅ)し、拝命して夏侯淵の指揮下に参じた。

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

軍営に太原の地図を拡げて、夏侯淵は諸将に下命する。

 

「今回の乱、もたもたして長期戦になればちと厄介だ。

鎮圧までの早さがカギよ!電撃戦で落とす!」

 

叛乱軍の大将は商曜(しょうよう)。

大陵の城を本拠に、太原地方の全域を巻き込んで叛意を起こそうという機運が高まっている。

だが、態勢はまだ万全には整っていない。

 

曹操軍の動きは早かった。

神速の行軍で将兵を太原に展開させると、夏侯淵は自ら前線にあって指揮を執り、巧みに配して拠点を次々と落としてゆく。

 

賊軍は機先を制され、勢いが死んだ。

 

「いざ参る!

敵の要衝を落とすのだ!」

 

中でも群を抜いて活躍した将は、徐晃である。

 

夏侯淵の示す全体戦略をよく理解して個々の局面で戦術を指揮し、短期間の内にのべ二十もの敵拠点を制圧した。

 

 

 「さすがの名将っぷりだな徐晃

俺のやりてえ戦を、こうも見事に体現するとは」

 

前線型指揮官として兵を動かす夏侯淵にとって、徐晃の堅実で攻守に優れた用兵はこの上なく頼もしい手足であった。

 

 

夏侯淵殿、さすが音に聞く名将でござる!

拙者の振るう武を、こうも巧みに使いこなすとは」

 

徐晃は自部隊による局面突破を、余すことなく戦略的勝利に結び付ける夏侯淵の指揮に将帥の大器を感じた。

 

 

元来烏合の反乱軍にとって、形勢不利の戦況は一層の悪循環をもたらす。

離反する勢力、日和見していた勢力はことごとく静観を決め込み、ついに大陵の城は孤立して曹操軍に包囲された。

 

 

 

~~~~~~~~~~

 

あっけなく大陵は陥落し、頭領の将・商曜は捕えられ夏侯淵徐晃の下に膝を屈する。

 

 夏侯淵は剣を向けて言う。

 「誰であろうと、殿の覇道に叛いて乱世を深める輩を野放しには出来ねえ!

・・・何か言い残す事はあるか」

 

商曜が口を開く。

「・・・漢室の威光を私物化する逆賊・曹操の手先め!

 我が正義の刃、武運拙(つたな)くここで折れようと、貴様らの不義を正さんと立つ者は我が後に次々と起ころうぞ!」

 

 

そもそも単独で叛乱を起こすにはあまりに寡兵。

そしてこの開き直った言い方である。

此度の決起、何か当てがあったかのように思える。

 

夏侯淵殿、これは・・・」

 

徐晃夏侯淵は顔を見合わせた。

 

「・・・ああ、こりゃ背後に黒幕がいるわな」

 

 

 

決して口を割らなかった商曜は武人として堂々処断され、ここに太原の乱は平定された。

 

 

 

 

夏侯淵徐晃は城壁に並び立ち、西陽の沈みゆく大陸を眺める。

 

 

西域に大乱の兆しあり。

 

 

夏侯淵はいつになく神妙な面持ちで語った。

 「・・・この先も殿の行く道には、多くの戦いが待ち受けている。

徐晃、また今度のように俺と一緒に戦ってくれや」

 

「無論でござる。

拙者の武、夏侯淵殿と同じく、曹操殿の大志のために!」

 

 

名将・夏侯淵のもとでその采配の妙を学んだ経験は、徐晃の戦歴にとっての至宝となった事であろう。

 

 

 

 

 

徐晃伝 二十九 終わり

 

 

 

徐晃伝 二十八『父の背中』

 

長きに渡る南方の戦乱を終えて許昌に帰った徐晃は、しばし休息の時を過ごす。

 

久方ぶりに家族との時間を味わい、しかしそれも束の間、すぐにまたひたすら修行と練兵に打ち込む日々に戻った。

 

 

徐蓋(じょがい)。

 

歳の十を過ぎたこの少年は、いつも邸宅の庭先で棍(こん)を振るうか、部屋で書を読みひたすら学んだ。

 

父・徐晃は武人である。

 

質実剛健な軍団の先陣に騎馬を翻(ひるがえ)し、これを率いて堂々行進するその雄姿を群衆の中から仰ぎ見て以来、徐蓋は父に憧れ、そして誇りに思っていた。

 

 

 

徐晃は家でゆっくり過ごす事がほとんど無かったが、時たま邸宅に戻る日は必ず、徐蓋の鍛錬を見守る時間を作った。

 

「うむ、いい構えでござる。

よく足を踏ん張り、腰を入れるのだ。

そう、そうだ」

 

「ソイヤッ!」

 

自らの内面には厳格な徐晃だが、子らにはとても優しく穏やかで、何事も決して咎めず肯(がえん)じて、暖かく成長を見守った。

 

本当に僅かな時間ではあったが、徐蓋には、尊敬する父に修行の成果を褒めてもらうこの時が何よりも一番嬉しかった。

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

ある日。

 

また久しぶりに父の帰りを迎えた徐蓋だが、物々しい輜重と部下の兵らを引き連れた父・徐晃の表情は険しい。

 

また遠くの地へ戦に行くのだ、と思った。

徐蓋の目には涙が溢れた。

 

 

そんな息子の姿を見て徐晃は、物哀しげな表情を浮かべ、膝を折ってその小さな顔から涙をぬぐう。

頭を撫でて、別れを惜しんだ。

 

 

立ち上がり、妻に言う。

 

「拙者は武人でござる。

・・・良き父親とは言えぬであろう。

 

されど子らを、家族を守るため拙者は戦わねばならぬ。

世が乱れ、略奪と殺戮が跋扈(ばっこ)する混迷の時代を拙者らは経験した。

二度とあのような地獄を子らに見せるわけには参らぬ。

乱世を統べる曹操殿の刃として、拙者はひたすら武を磨き、戦うのみ」

 

徐晃の妻は才女で良く夫を理解し、家を守り、心は共に乱世を戦ってくれた。

 

ただ頷き、泣く徐蓋を抱き寄せ、その弟ら妹らも身に寄せて、徐晃の出陣を送り出す。

 

 「・・・では行って参る。

蓋よ、よく母上の言う事を聞いて、弟ら妹らを守るのだ。

 

また修行の成果が見られる事、楽しみにしておるぞ!」

 

 徐晃は踵(きびす)を返し、家族にその大きな背中を向け戦地へ赴く。

 

 

徐蓋は、父の背を見て涙を止めた。

ぐっと堪えて、精一杯に手を振り見送った。

 

 

幼心にも徐蓋は、いずれ自分も武を磨いて強くなり、父の背を追って共に行きたいと願うものだった。

 

歳月はこの少年をもまた精悍な武将に成長させる。

やがて偉大なる父・徐晃の軍を見事に受け継ぐ名将・徐蓋が戦地に立つ事となるのだが、それはまたずっと先の話である。

 
 
 
 
 
徐晃伝  二十八  終わり
 

 

徐晃伝 二十七『遼来来』

 

「推して参る!」

 

セリャーーッ!と斬り掛かる張遼の激しい連撃を、徐晃は槍さばき巧みに体幹をぶらさず、一刀一刀確実に受け流す。

 

ギラリ、一瞬を見極めて渾身の一振りを繰り出す徐晃

その一撃をすんでの所で、張遼は飛び退き躱(かわ)してみせた。

 

周りを囲み固唾を呑んで見守っていた兵達から、ドッと歓声が沸き起こる。

 

模擬戦といえ、今や曹操軍の大将として並ぶものなき双璧の武人が、真剣勝負の激闘を演じているのだ。

これが興奮せずにいられる兵士は居ない。

 

徐晃殿!

相も変わらず堅実な防禦と大胆な攻撃、まこと見事なる武よ!」

張遼は賛辞を贈る。

 

「過分なお言葉、恐れ入り申す。

張遼殿の苛烈な攻めこそ、その一打一打以前にも増して重く激しく!

真の武への道を駆け抜けておられる」

 

徐晃張遼は久方ぶりの手合わせを終え、各々許昌の邸宅で湯浴みを済ませると、その夜は諸将と共に酒宴に顔を出して語り合った。

 

大いに武を語り合った。

 

張遼は盃を傾けながら、過日の友誼を懐かしむ。

「・・・いやはや、こうして武の道を語り明かしていると、徐晃殿、関羽殿と三人、互いに武を競いながら戦場を駆けた日々を思い出す・・・」

 

「懐かしゅうござるな・・・」

 

 

徐晃は、先立って漢水の地で関羽と激闘を繰り広げた。

 

その時関羽も、今の張遼を同じ事を語っていたか。

 

乱世に生きる武人三人、行く道は違えど、志は同じ。

共に駆け抜けた日々は宝であった。 

 

張遼殿。

関羽殿は今や荊州に君臨し 、天下に武威を布いてござる。

曹操殿が征く大望のため・・・いずれ関羽殿とは雌雄を決する時が来よう」

 

 「うむ。いずれその日が来たるまで、武の道を究めん!

我らの力、曹操殿の大望成就のために!」

 

張遼は拳を握り、その眼に闘志を燃やした。

 

 

後、張遼は対孫呉戦線の司令に抜擢され、二度と関羽と相見(まみ)える事は無かった。

 

しかし曹操の覇業を支えた名将・張遼の活躍は、合肥での鬼神の如き伝説を打ち立てる。

『遼 来来』の威名は大陸に拡がり、やがて関羽の耳にも届いた事だろう。

 

 

 

 

張遼徐晃よりも六年早く、病を得てこの世を去った。

 

徐晃とは終生、良き友であった。

 

 

 

 

 

 徐晃伝 二十七 終わり



徐晃伝 二十六『午睡の夢』

 

 

「・・・孟徳、・・・孟徳!」

 

夏候惇は怪訝な表情で曹操の顔を覗き込んだ。

 

曹操は、練兵中に寝ていた。

 

 

「ん・・・むぅ・・・夢を見ていたわ」

 

練兵場に面する台座に居眠りをしていた曹操は、物言いたげな夏候惇の顔を見るや、あくびをしながら言った。

 

「今は雌伏の時よ。

赤壁の大敗はただ認め、次への備えをすれば良い」

 

落ち込んでいるかと思っていたが、意外な言葉に面を食らった夏候惇は、やがて高笑いをして練兵へ戻っていった。

 

曹操は再び目を閉じる。 

 

 

 

悪夢を見ていた。

 

息子・曹昂の死、凄絶な典韋の最期。

虚空を掴む手の先で処刑される陳宮、静かに息を引き取る郭嘉

毅然として我が下を去る関羽・・・そして長江を焼き尽くす赤壁の大火。

 

飄々とした言とは裏腹に、曹操は自らが歩んできた過酷な覇道、その業の重みに苛(さいな)まれていた。

 

 

 

 

 

 

「ソイヤッ!!」

 

勇ましい雄叫びが響く。

 

見ると、整然と軍列を成し、一糸乱れぬ動きで修練に励む徐晃の一隊がその威容を際立たせていた。

 

 

「「ソイヤッ!!」」

 

兵達の眼には、決意が宿る。

 

 

皆、過酷な乱世を経験している。

暴威と殺戮が支配する混迷の時代を生きていた。

その暗闇に差す一筋の光、理(ことわり)をもって世を治めんと示したのは、他ならぬ曹操である。

 

皆、曹操の行く道を信じている。

その覇道を武で支えるべく、ひたすら修練に励む徐晃

彼の清廉な在り方を兵達は心から尊敬し、良き範とした。

 

 

「そうか・・・そうであったな」

 

一心不乱に鍛錬に励む徐晃の、その真っ直ぐな面持ちを見て、曹操は思いを新たにする。

 

「我が覇道、乱世を統べる大望のため・・・。

如何な事があろうとも、立ち止まるわけにはいかぬ」

 

 多くの傑出した将兵曹操の行く道を支えている。

散って行った者たちの思いが、曹操の覇道を照らしている。

 

一人苛(さいな)まれていた悪夢から、ふっと憑き物が落ちたように感じた。 

 

 

 

 

 

「ソイヤッ!!」

 

徐晃の精悍な雄叫びが、広い青空に勇ましく響いた。

 

 

 

 

徐晃伝 二十六 終わり

 

三好三大天 第一話『桃園の誓い』

 



時は戦国。

 


四国は、阿波徳島に三人の男がいた。

 


長逸(ながやす)、政勝(まさかつ)、友通(ともみち)。

 

 

春風が吹き抜けて一面に、桃の花が咲き乱れる。

長逸は盃を掲げ二人に語りかけた。


「我ら、義にて結ばれし三兄弟。

上は大殿を支え奉り、下は民草に至るまで。志を同じくして助け合い、困窮する者らを救わん!」

 

 

 

長逸は、幼い頃に家族を亡くした。

 

徳を重んじ、目一杯の愛情を注いで育ててくれた偉大な祖父。

厳格でいて優しくて、立派な武人であった父。

皆、戦で討ち死にをした。

 

乱世である。

 

長逸の青春は苦難の日々だった。

一族の大半を喪って戦火に追われた三好家の者らを、まだ若く幼い長逸は懸命に守り、よくも生き延びた。

 

厳しい時代にこそ人の情、仁徳を重んじ助け合う。

己ひとりが生き抜くにも必死な乱世にこそ、人を思い遣る心を忘れない。

__容易な事ではない。

しかし偉大な祖父の教えを長逸はよく守った。

 

仁徳の士・三好長逸(ながやす)。

 

精悍な若武者に成長した彼は、今、三好の長兄として桃園に誓いを立てる。

 

 

~~~~~~~~~~~

 

一族の豪傑・三好政勝。

無双の怪力を誇るこの偉丈夫は、長逸の仁徳に惚れ込んだ。

 

 

乱暴者と罵られる彼だが、その粗暴さの裏には巨躯と異形を皆に恐れられ、忌み嫌われた悲しみがあった。

 

そんな政勝にとって、誰とも分け隔てなく誠実に接する長逸から受けた情、その親しみと優しさは胸を打った。

 

初めは不遜な態度であった政勝も、長逸の仁徳に触れ次第に心を開き、今や無二の同志となった。

 

「長逸殿が築く仁の世のため。

俺は命を捨てても惜しくはねえ!」

  

政勝は、太く逞しい腕を上げ桃園に盃を交わす。

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

岩成友通(いわなり ともみち)。

 

出自は、定かでない。

卑しい生まれであったのかもしれない。

 

生来賢く、怜悧な智略と才気があった。

 

友通の父が三好家の下働きをした事から、友通もまた三好に仕えた。

めきめきと頭角を現し実力を示す友通を、しかし周りは素直に才を認めず、かえって心無い者らが彼を謗り蔑んだ。

 

賢い友通は幼心にも、それは己の身分が低い故だと気付いていた。

 

 

そんな彼にも分け隔てなく誠を尽くし、その智を見出し敬意すら表したのは三好一門の若侍、長逸であった。

 

人を疑うよう育った友通だが、長逸の徳に触れて人生が変わる。

理想に燃えるこの若武者が、利己や打算で生きている事では無いと友通は知った。

己を守るため冷たく閉ざしていた心は溶け出し、長逸の徳に次第に感化され、今や無二の同志となる。


 

「長逸殿が掲げる仁の志。

私は、真に仕えるべき主君を得たり!」

 

鋭利な智略をたたえる貌は若き情熱に満ち満ちて、友通もまた桃園に盃を交わす。 

 


 

~~~~~~~~~~~~~

 

「生まれた時は違えども。

死ぬ時は揃って同じ年、同じ月、同じ日を願わん!」

 

長逸、政勝、友通。

 

志を同じくする三人の男たちは、今、一面の桃園に義兄弟の誓いを交わした。 

 


キィィーーーーン

 


盃が重なり、鳴り響く。

 

 

 

春風が心地良く流れた。

 

 

 

後に戦国乱世を駆け抜け、"三好三大天"と讃えられる将星たちの、これが始まりの地であった。

 

 

 



三好三大天  第一話『桃園の誓い』 終わり

 

 


 

メイキングオブ徐晃伝

 

私が三国志に熱中した最初のきっかけは、中学生の頃、友人宅で遊んだ『真・三國無双2』でした。

疾走感のある音楽、一騎当千と無双の爽快感、三国戦乱のスペクタクルと多くの魅力的な登場人物たち。
まったくの異文化にして全てが胸を熱くする、斬新で大きな衝撃を受けた記憶が残っています。

 

やがて『真・三國無双3』を購入し、とにかく熱中して家で一人でひたすら遊んでおりました。

学校に行っても、脳内では三國無双の事ばかり考えていた時期もありました。

 

三國無双との出会いは、中国史ひいては歴史全般に対する強い興味を惹かれたきっかけの一つになったと思います。

 

 

 

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高校生になると歴史を好む趣向はより顕著となり、とにかくたくさんの本を読みました。
国史十八史略から始まり、史記、そして三国志を詳しく知りました。

 

当時の無双シナリオはかなりの割合でゲームオリジナルであり、群雄たちの生涯とその最期、三国の行く末など、史実(あるいは原作の演義)を再現しない部分が多かったと感じます。

そのため三国志の、元々の物語を初めて通して読んだときの面白さには非常に大きな興奮と感動を覚えました。

ゲームを通じて断片的に知り得た情報の数々が、一つの物語を軸に次々と繋がり完成していく。
これほど面白くて、心から熱中できる事は他にありませんでした。

 

三国志、最高!

 

 

 

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大学でも歴史を学びましたが、専攻はドイツの軍事史だったこともあり数年間、三國無双も含め中華史から離れてしまった時期がありました。

 

もう新作を発売日に買うような情熱も何も、全く失っていた頃のことです。

ふと『真・三國無双6』が新しく発売するという情報を得て、懐かしいなぁと思いなんとなく、公式サイトにアクセスしてみました。

 

ページを開いた瞬間に流れ出したのは、重厚なギターリフと疾走感みなぎるベースライン、あの懐かしい思い出の日々、三國無双を象徴するかの如き鮮烈で痛快な、めちゃカッコいい~~BGMでした。

(ちなみに、♪呉郡攻略戦の曲でした。)

 

めちゃくちゃテンション上がった。

往時の記憶がまざまざと甦り、かつて他の何も考えられぬほど熱中した三國無双という神作品に対する熱い想いの数々が一瞬のうちに喚起され、あとはもう夢中になって食い入るように公式サイト上のあらゆる情報を閲覧しておりました。

 

買おっ!

 

こうして数年振りに衝動的に、三國無双の世界に復帰しました。

 

 

 

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満を持して世に出た最新作『真・三國無双6』は、期待に違わぬ最高傑作でした。

 

シネマティック一騎当千を謳うその圧倒的ボリュームのストーリーモードは、三国志演義の物語に今だかつてなく忠実に寄せた、いわば原作本来の重厚な人間ドラマ、群像劇に焦点を置きそのハイクオリティ映像美と痛快な臨場感溢れる演出を以って再現した革新的タイトルでした。

 

文字通り寝食を忘れて、数年来のブランクを埋めるようにひたすら熱中したものです。

 

 

この時、生涯を変える出会いがありました。

 

姓は徐、名は晃。字は公明。

 

魏の武将で、あまりこれといって残る特徴や印象的場面は無かったように感じます。

なんとなく、まぁ、いるよね。

ずっといる。

いるのは知ってるよ。

 

そんな存在でした。

 

 

 

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 『真・三國無双6』というゲームで最強の武将は誰か?

 

それは徐晃です。

 

呂布でも、関羽でも張飛でもなく、徐晃でした。

 

あくまでゲーム性能でというお話ですが、徐晃のC3→EX攻撃「武の頂が見える」は、自身に時限超絶耐性強化のスキルを付与し、難易度:修羅の呂布が繰り出すHPゴッソリ削り攻撃すら、ミリのダメージしか食らわないガチガチの堅物となる事が出来ました。

 

この特性はゲームバランスの崩壊をもたらすほど強力で、高難度レア武器の収集など、トロフィー・コンプリートを目指すプレイヤー達にとって徐晃の圧倒的武の頂きは革命的恩恵をもたらしたのです。

 

強キャラ厨というわけでもないので、もちろん物語も楽しみ色んな武将で一通りじっくりと遊んで、しかし最終的には効率が断然違ったので、とにかく徐晃を使って様々な高難度ミッションやクロニクルモードなど、徐晃と共に無双6を遊び尽くしました。

 

あまりにも強すぎたので『真・三國無双6 猛将伝』ではEX攻撃に下方修正が入り、武の頂から遠ざかってしまいますが、どうした事か、弱くなっても何となく徐晃徐晃を使ってしまう自分がいる。

 

友人との2人プレイとか、レジェンドモードやチャレンジモード、誰か一人武将を使いましょうという場面で何となく、いつも徐晃を選んでしまう。

 

真・三國無双7』では徐晃はもう強キャラでも何でもなくなりましたが、公式サイトのアクション動画ではまず真っ先に、徐晃を見に行ってしまう自分がいる。

 

 

徐々に、しかし気づいた頃には決定的に、徐晃は自分の中で無二の存在となっていたのです。

 

 

 

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徐晃の事蹟について、学びました。

 

総合的な三国志の作品ではあまり徐晃の出番は描かれないので、ネットの情報を中心に熱心に調べて学習しました。

 

徐晃は、他の魏の華々しい活躍を飾る武将たちと比べると一見地味で目立ちません。

 

しかし徐晃は知れば知るほど、調べれば調べるほど非の打ち所がない。

 

長きに渡る三国の戦乱で少なくとも三十年以上は第一線で戦っていますが、ただの一度も負けがない。

 

これは曹操をして「孫武にも匹敵する」と称賛されたように、兵法の理に適った戦い方をしているからだと強く感じます。

 

 

私自身、高校生の頃に孫子の兵法と出会い、鮮烈な衝撃と多大な影響を受けました。

きっかけは歴史上の英雄たち、曹操はじめ武田信玄、ナポレオン、東郷平八郎に至るまで多くの賢人が孫子を重んじていた事から、原典に当たってみようと思ったためです。

 

そこに記された徹底的合理主義による実践的な問題解決思考は、古代の戦争のみならず人間社会のあらゆる事象に適用される、真理を説いていると感じました。

 

長年に渡り読み続け、少しずつ着実に人生観に取り入れて、今に至るまで孫子は自分にとって座右の書と思い愛読しています。

 

 

 

「戦わずして勝つ」

「まず勝ちて後に戦う」

「敵を知り己を知れば百戦して危うからず」

 

孫子兵法では様々な金言が語られますが、要点を絞って説くならまず無理をしないこと。

確実に勝てる状況を整えてから戦うこと、自軍が決して負けない状況を作ること、そのために徹底的な情報収集を重んじること。

 

徐晃の事蹟は、この条件を全て忠実になぞっていると感じます。

 

 

袁家との戦いで敵城を攻めず、理を説いて降伏させ、戦わずして勝った手腕。

襄樊での関羽との戦いでは不利な状況にあっては決して動かず、戦況の把握と友軍との連携に徹して、好機と見るや一転して攻めに転じたその戦い方。

 

他にも兵糧を焼く、渡河して敵の意表を突く、盟約を重んじて諸侯の手を借りる。

三國無双シリーズでひたすら筋トレに励み武の頂きを目指す、ともすれば脳筋ゴリラ武官とも取られかねないイメージとはかけ離れた、非常に冷静で智的な、それでいて将帥としての偉大さが、数々のエピソードから感じられます。

 

 

極め付けは、その清廉な人格でありましょう。

 

多くの武功を上げ、天下の大将軍として君臨するも決して驕らず「世の人は良い主君に恵まれない事を悩みとしている。拙者は曹操殿という素晴らしい主君に仕える事が出来て、これ以上の幸せはない。個人の功名など不要でござる」(魏志「張楽于張徐伝」)

 

「周亜夫の風格がある・・・」と曹操を敬服させたこの象徴的なエピソードからも、徐晃の誠実で廉直な人格が伝わって参ります。

 

 

 

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つい、長くなってしまいました。

ここまでお付き合い頂き、ありがとうございます。

 

題名に冠しました「メイキングオブ徐晃伝」ですが、当大河ブログで更新している『徐晃伝』についてその想いを語ろうと、前提から話し出したところ思いのほか長くなってしまいました。

すっかり、貴重なお時間を頂いてしまいました。

 

 

「文章を書きたいな」と思い、全く下手で素人でお恥ずかしい限りですが、今まで自分に欠けていた行動力、とりあえず書いて、下手でも世に出して、場数を踏んで整えて行こうと思い切って更新してみました。

 

初めのうちは溜め込んでた構想が多く整理出来ていたので、やりたい事を拙いながらもやれてたのかなと思います。

しかし最近は段々書きたい事の構想不足のまま書いてしまって芯が弱く、構成がぐだぐだになって来てしまいました。

あと更新ペースもやたら早過ぎた。

追えて読んでくれてる人がかなり少なくなってしまってる感じ。

反省しています。

 

物語中盤からは関羽徐晃の因縁を描こうという意図が先行するあまり、形式だけ追って関羽の人物描写が足りず、徐晃がどんな意志で乱世を生き抜いているか、読み手が納得できるような中身が伴わなくて、内容が薄くなってると危機感を募らせています。

 

一旦、構成を見直してブラッシュアップして、内容を改めて参りたいという思いでいます。

その合間このように単発で、普通にブログっぽい文章も書いていっても良いのかな、と今回の更新に至った次第であります。

 

 

フォトモードの記事とかも書いてみようかな!

Twitterでもやってるけどね!

 

皆さん、いつも素晴らしい無双ツイートの数々をまことにありがとうございます。

 

 

三國無双、最高~~!!!

 

 




 

まとまりもなく書き連ねてしまいましたが、ここまで読んで頂き本当にありがとうございました。

今後とも何とぞ宜しくお願い致します。

 

 

 

 

 

メイキングオブ徐晃伝 終わり

徐晃伝 二十五『激闘の行方』

 

※この物語はフィクションです。

 

徐晃関羽は、持てる武の限りを尽くして戦った。

 

激しく合わさる刃が武の髄を現し、戦いを通して互いの生き様を語り合う。

 

良き宿敵(とも)を得たり___。

 

鋼を熱く打ち合い死闘を演じながら、二人の表情には笑みすら浮かんだ。

 

 

 

しかし、それゆえに両雄は、命運を決すべきが今日この場所ではないと知る。

 

刃を通じて伝わる懸念は脳裏をよぎる要衝・江陵の帰趨(きすう)。

 

「・・・水をさしたな、徐晃殿」

 

武人として雌雄を決さんと望む一方、将として、ここで決闘に終始は出来ない。

関羽殿、それは拙者とて同じこと」

 

一軍を率いる将として、戦略を成す役割がある。

 

両軍に伝令兵が駆け参じ、戦況が伝えられた。

「江陵の曹仁殿、援軍と合流されたとの由!」

孫呉の大軍は一時長江へ退いた模様!」

 

 

関羽は偃月刀を降ろし、徐晃に向かって言う。

 

「すまぬな徐晃殿、この機に荊州を征さんとするは軍師殿の御指図。

義兄・劉玄徳の大志がため!

貴殿との決着は、後に預けさせて頂こう」

 

徐晃が応える。

「承知した。

拙者とて曹仁殿のお命、救う役割がござるゆえ」

 

 

二人は矛を収めた。 

 

「いずれまた、戦場で相まみえようぞ!」

 

赤兎馬を翻し、関羽が背を向ける。

 

 

・・・八年前のあの日と同じように、徐晃はその背を見送った。

関羽の武に届かぬ己が未熟さを悟り、自ら斧を落とし戦わずして負けた、その悔しさと不甲斐なさを片時も忘れたことはない。

 

しかし、かつての思いと今は異なる。

 

関羽との再会は、徐晃が歩んできた道を肯(がえん)じた。

 

遠く遥かな障壁と追い続けた関羽の武に、刃が届いた。

決着を見ずとも、一歩も引けを取らず武を奮い堂々と渡り合った。

 

 

徐晃は蒼く晴れた天を仰いで、神妙に目を閉ざす。

 

 

 

・・・武の頂が見える。

 

 

関羽殿、貴公との決着はいずれ天の時を得よう。

それまで拙者はひたすら修練に励み、武を磨くのみ」

 

乱世に生きる武人・徐晃は、ただ武を磨き奮い、曹操の覇道を支えて駆ける。 

 

 

 

 

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満寵は良く指揮を執り、劉備軍を足止めして味方が撤退する時間を稼いだ。

 

徐晃も戦列に戻り、江陵から退却した曹仁と合流する。

 

「満寵殿、徐晃殿。救援かたじけない!

無念だが江陵は守りきれなんだ・・・」 

 

泥と傷だらけの鎧兜が、江陵での激戦を物語る。

 

満寵が言った。

「いえ曹仁殿、これで良いのです。

今後も孫・劉の圧力から江陵を維持する事は、今の我々には困難です。

曹仁殿が砦をよく堅守し、孫呉の兵を退かせてくれたおかげで、この隙に関羽が城を取るでしょう。

この展開は我々の筋書き通りです」

 

満身創痍の曹仁の眼に、希望の色が浮かぶ。

「なんと、そこまで先を見通していたとは・・・自分も及ばずながら、奮戦した甲斐があったというもの」

 

 

 

今回の荊州戦役で、曹操軍はその版図を大きく北へ後退させる。

一方で大局は、目論見通り荊州の帰趨を巡る孫・劉の利害対立を浮き彫りにした。

 

この布石は後に大乱を招き、徐晃の宿命も大きく左右する事になるが・・・

 

「さあ、帰ろう徐晃殿。

此度の戦役は長く、過酷だった。

兵達にも私達にも、今は休息が必要だ」

 

 

満寵と徐晃は手を取り合い、共に難局を乗り切った。

 

 

かけがえのない戦友(とも)である。

 

 

 

 

許昌を目指し、今はただ帰路に途いた。

 

 

 

 

 

 

徐晃伝 二十五 終わり