サンダー
でんげきポケモン
図鑑No.145 タイプ:電気、飛行
伝説の鳥ポケモンの一羽で、雷を自在に操る。
普段は雷雲の中に棲息すると言われ、羽ばたくと激しい稲妻を落とす。
初代赤緑版ではカントー地方の無人発電所で遭遇出来るが、この無人発電所はカントー地方のマップと実際の関東地方の地図を重ね合わせたところ大体茨城県東部に位置し、那珂郡東海村にある東海発電所をモデルにしているのではないかと考えられる。
東海発電所は、1960年代に建設された日本初の商業用原子力発電所で、27年間の営業運転を経て1998年に運転を終了、現在に至るまで原子炉解体プロジェクト(廃炉作業)が行われている(運転停止しているが無人というわけではない)。
雷に関する鳥として最も著名な存在は、アメリカ大陸の先住インディアン部族の伝説に伝わるサンダーバード (Thunderbird)である(スー族の伝承では「ワキンヤン」と呼ばれる)。
これは巨大な鷲の姿をした雷の精霊で、自在に雷を落とす事が出来るとされる。
複数の部族の神話に見られる共通の伝承であり、柱状の木製彫刻トーテムポールのデザインにもよく用いられる。
現代でも北米におけるUMA(未確認生物)の一種として都市伝説の類に巨鳥の目撃情報があるが、それらは上記の伝承と関連付けられてサンダ―バードと呼ばれている。
名称は第二次世界大戦中のアメリカ陸軍航空軍事基地サンダーバード飛行場にも採られ、またこの名称を由来とした1960年代のイギリスの特撮SF作品『サンダーバード』シリーズも有名である。
Mozilla社が開発する電子メールクライアント『Mozilla Thunderbird』や、JR西日本・IRいしかわ鉄道による大阪駅~金沢駅・和倉温泉駅間の特別急行列車サンダーバード号など様々な事物の名称の由来となっている。
日本では実在の鳥類であるライチョウ(雷鳥)との関連も想起されるが、こちらは上述のサンダーバード、雷を起こす巨鳥といった伝承とは関係が無く、古くは鎌倉時代より「らいの鳥」と呼ばれた高山帯に棲息する小型の鳥類である。
ライチョウの羽毛は夏は褐色、冬は純白に生え変わる。
脚にも毛がもふもふと生えており、まるでウサギの足のようだ。
富山・長野・岐阜県の県鳥に指定されていて、飛騨山脈や赤石山脈はじめ高山帯の一部特殊な環境にしか棲息していない国指定の特別天然記念物。
古来より山岳信仰と結び付き、「神の使者」の鳥として崇められてきた(少なくとも江戸時代には火除け・雷避けの御利益を有す信仰対象となっていた)。
一説には鷲など猛禽類の天敵から身を守るため、雷の鳴るような悪天候で主に活動した事から命名されたとも言われるが詳しい由来は定かではない。
『元始、女性は太陽であった』の一文で知られる大正・昭和期の女性解放運動家、平塚らいてうの名は彼女が25歳の時「孤独の鳥」「冬山の鳥」といった意味合いから取ったライチョウを由来とする筆名である。
気象現象としての雷は、大和言葉における「神鳴り」が語源であると言われるように古くから超越的存在によって引き起こされると認識されていた。
『古事記』『日本書紀』に描かれる建御雷神(たけみかづちのかみ)はその代表で、また平安時代に讒訴により流刑に処された右大臣菅原道真はその死後、雷神(かみなりさま)となって朝廷に祟りを成すものと恐れられた(落雷時に「くわばら、くわばら」と唱えるのは道真の領地であった桑原を由来とするらしい)。
後世には江戸時代初期の俵屋宗達による『風神雷神図』で描かれるような有名な雷神の姿を取ったり、民間伝承においては伝説上の動物と結び付いて竹原春泉の『絵本百物語』に描かれるような雷獣(雷を落とすとされる空想上の動物、妖怪)が信仰された。
関連する伝説ポケモンとして雷獣はライコウ、雷神はボルトロスのモチーフとなっている。
日本の伝承では上述の雷神・雷獣が広く信仰されてその役割を担っため、北米におけるサンダーバードのような雷に関する伝説上の鳥は著名ではない。
ただし『平家物語』で源三位入道頼政に討伐される妖怪・鵺(ぬえ)は一説には雷に関連し、またその原義も鳥の名であったとされる(『古事記』『万葉集』)。頼政はこの功績で朝廷から太刀・獅子王丸を下賜されたとの伝承が残る(現:重要文化財、東京国立博物館蔵)。