徐晃伝 四十四『兵法の極意』

 

 

 

魏軍が動いた。

 

大将は、徐晃

 

 

水没し、関羽の大軍に囲まれた樊城へ向かう。

 

先鋒は副将・趙儼(ちょうげん)。

増援を率いて駆け付けた徐商、呂建の両将が左右に展開する。

 

 

 

陽陵坡(ようりょうは)の要衝まで進み出ると、ついに魏蜀は戦線に対峙した。

 

 

眼前に立ち塞がる第一の障壁、蜀軍の拠点・偃城である。

 

 

 

「・・・では、徐晃将軍の策の通りに」

 

副将・趙儼、一気に城を攻め落とすかと思えばそうでは無い。

 

工兵を展開し、城の外周を回るように塹壕を掘り始めた。

 

 

 

 

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「掘れぃ!掘り進めよ!」

 

包囲に窮する味方を救わんと駆け付けるところ、悠長に陣を伸ばす暇など無い。

 

しかし、魏軍はひたすら坑道を掘る。

 

 

 

 

この一手に偃城の蜀軍はむしろ恐怖した。

 

「攻め寄せるならば抗戦は出来る。

だが、兵站を断たれれば孤立してしまう!」

 

 

先般、関羽が一部陣形を再編した為、前線の偃城への兵站線は細く伸びていた。

 

趙儼(ちょうげん)は丁度その補給線を断つように塹壕を掘り進める。

 

 

このまま戦線から孤立すれば、勝ち目は無い。

城壁を高く、食い止める間に本軍からの救援を頼みとしていた蜀軍には、この状況を覆す手は知れなかった。

 

 

 

事前に徹底して敵陣と地形を精査した徐晃の采配が光る。

 

関羽殿は強敵。

来たる決戦まで、少しでも兵力は温存せねば。

戦わずして勝つ事こそ、兵法の極意でござる」

 

 

 

偃城の守備隊は不利を悟ると、潔く、軍営を焼き払い撤退した。

この状況で打てる手としては最善である。

さすがに関羽の麾下であった。

 

 

 

こうして魏軍は堂々、無血に開いた偃城を取る。

 

 

魏将・趙儼は感嘆した。

「一滴の血も流さずして、初戦に勝利を飾るとは。

やはり徐晃将軍は、稀代の名将」

 

 

斯くて今一歩、関羽に迫る。

 

 

 

 

 

 

徐晃伝 四十四 終わり