「拙者の武、兄者の志と共にある」
関羽の雄々しき言が頭の中に響く。
あの比類なき強さの源泉は、仁の志を支えんと決す強固な信念にある。
徐晃が往く武の頂き、その眼前に立ち塞がる巨大な壁の如き関羽の存在。
強大な敵であった。
「ソイヤッ!!」
徐晃はひたすら修練を積んだ。
目を瞑り、大斧を振るいながらその脳裏には関羽の幻影が疾る。
暗闇の中で激しく刃を合わせ、打ち合うこと数十合。
偃月刀を翻す雄姿が迫る。
「・・・!」
何度も何度も、心眼の中で関羽に挑む。
どうあっても今一手、追いつかぬ速さの一撃が襲う。
強烈な信念に支えられた超越的な関羽の武が、徐晃の身体を何度も斬り裂いた。
「拙者の武、まだまだ高みへ遥かに届かぬ・・・!」
己に足りぬ武を省みて、何度も何度も修練の中に探し求める。
関羽の幻影はその刃に迷いなく、尋常ならざる太刀捌きで徐晃を襲う。
そのたびに徐晃は身を斬られ、学んだ。
学んだ一撃を次には切り抜けるが、その先に更なる一撃が徐晃の武を超えて襲い来る。
ただひたすら鍛錬に励んだ。
関羽の幻影と戦い続け、何度敗れてもなお徐晃は武の道を駆け昇る。
武の頂きは、関羽を超えたその先に見える。
偃月刀が煌めき、また徐晃の胴を斬り裂いた。
「・・・まだまだ!
関羽殿、もう一度でござる!」
徐晃は汗に濡れた腕に大斧を握り、ただひたすら鍛錬に励む。
徐晃伝 十六 終わり