徐晃伝

徐晃伝 十三『将』

乱世の統一を急ぐ曹操は、時として彼に反する者や愚鈍な者に対して苛烈だった。 全ては、混迷の乱世を終わらせるため。 だが仁の人・劉備にとって曹操の非情な在り方は受け入れられなかった。 共に乱世の終焉という大志を同じくしながら、二人の英雄は決別す…

徐晃伝 十二『戦友』

歴史ある漢王朝の帝を戴いた曹操は勢力を拡大し、各地の群雄は続々と軍門に降った。 仁の人、劉備もその一人である。 今だ流浪の身でわずかな勢力しか持たぬ劉備だが、人望があり慕われた。 漢の献帝の縁戚という血筋もある。 曹操は彼を厚く遇した。 劉備も…

徐晃伝 十一『武人張遼』

徐晃は曹操軍の先陣に立って奮戦した。 先の張繍との戦乱、そして寿春の名族・袁術との戦いでも、獅子奮迅の活躍を見せる。 「参る!」 将として兵を率いながら、自らも巨大な斧を奮って次々と敵を薙ぎ倒す。 常人には持ち上げる事すら困難な重量だが、徐晃…

徐晃伝 十『乱世の奸雄』

歴史ある漢王朝の帝を戴いた曹操は、大義を得る。 付近の群雄たちは続々と曹操のもとに降り、勢力は一気に栄えた。 先だって降伏した張繍(ちょうしゅう)も彼ら群雄のうちの一人である。 「我が宛城にて、曹操殿を歓待致したく、お招きさせて頂きます。」 曹…

徐晃伝 九『徐蓋』

徐晃は、許昌で妻を娶(めと)った。 これには徐晃が朴念仁で、なかなか縁談が進まなかったが、仲人の曹洪は随分と手を焼いてくれた。 徐晃の朴念仁ぶりを表す挿話として、少年時代にこんな事があった。 徐晃と満寵がとても仲が良い様を見ていた晃の妹は、純真…

徐晃伝 八『牙断』

曹操軍の陣営には、綺羅星の如き数多の名将がいた。 中でも最古参の猛将・夏候惇は、特筆すべき存在感で曹操軍を率いた。 徐晃もこの夏候惇によく用兵と戦術の法を学んだ。 ある日、夏候惇が言った。 「徐晃よ、許昌の鍛冶屋には腕利きが揃っている。 お前の…

徐晃伝 七『新たなる道』

徐晃は迷いを断ち、武人として覚醒した。 武の頂きへ駆け昇るべく己が信ずる道を邁進せん。 戦場を駆ける徐晃の眼には、長き雌伏の時を経て晴れ晴れと道が開き、新たなる景色が見えた。 「おお・・・武の頂きが見える!」 目覚ましい徐晃の奮戦、そして夏候惇、…

徐晃伝 六『決意』

夜半、徐晃の軍営に突如一人の男が訪れた。 「やあ、久しぶりだね。徐晃殿」 大胆にも単身、丸腰で敵陣に乗り込んできたその顔、徐晃には見覚えがあった。 「・・・満寵殿?あの満寵殿か? おお、なんと懐かしい!」 今は敵味方といえ旧知の仲、徐晃は礼を尽く…

徐晃伝 五『曹操』

事態は風雲急を告げる。 李傕と郭汜が起こした内紛に乗じて、董承ら謀臣は献帝を伴い洛陽へ逃れた。 楊奉はかねての計画通り、李傕を裏切って董承に付いた。 徐晃は、その楊奉の下にあって献帝を護衛し洛陽にいる。 ところが帝を奪われた事の重大さに気付い…

徐晃伝 四『無明』

西涼の豪族・馬騰は、長安奪取を目論み兵を挙げた。 「漢室の威光を盾に暴政を奮う不義の輩、李傕を討つ! 我が正義の刃、受けてみよッ」 長安近郊の平野で、馬騰軍と李傕軍は激突した。 徐晃はこの時、李傕軍・楊奉麾下の一隊を率いて参陣し、ここで正規軍…

徐晃伝 三『葛藤』

楊奉の配下となった徐晃は、各地で賊徒鎮圧にあたり、ここで実戦と用兵の法を学んだ。 白波(はくは)賊上がりの兵の中にあっても、徐晃はその高潔で清廉な在り方を決して崩さなかった。 賊から巻き上げた財で酒色に溺れる彼らを、しかし一方でその精強な武勇…

徐晃伝 二『恩人』

精悍な若者に成長した徐晃は、はじめ父と同じ県の役人として禄を食んだ。 真面目に、実直に職務を果たす傍ら、兵書を学び鍛錬に励んだ。 その頃、世を覆った黄巾賊も主な首領は官軍に討たれ、乱は一応の終息を見る。 だが依然各地には賊の残党が跋扈(ばっこ)…

徐晃伝 一『友』

※この物語はフィクションです。 姓は徐、名は晃。字(あざな)は公明。 司隷河東郡楊県の人。 父は真面目で廉直な地方役人、母はおおらかで優しく、妹もいた。 晃はこの家庭に生まれ幼少期を育った。 晃は近所の悪童どもを率いて、喧嘩して街中を駆け回った。 …